サンノゼのHPパビリオンで行われたUFC on FOXの前座試合8試合は、何とそのうち6試合が打撃によるKO決着となった。ストライクフォースの本拠地だったこの会場において、同団体出身の選手は2勝2敗という結果に終わった。対してWEC出身者たちは3戦全勝という好成績を収めたのだった。
チャド・メンデス vs. ダレン・エルキンス
チーム・アルファメールの仲間、ジョセフ・ベナヴィデスとTJ ディラシャウの二人がTKO勝ちを収めたのに続いて、チャド・メンデスも見事にTKO勝ち。チーム・アルファメールはこの日、ハットトリックを達成したことになった。FXで放映されたプレリミナリー・ファイトのトリを務めた試合において、メンデスは僅か68秒でダレン・エルキンスを倒してみせ、エルキンスの連勝を5で止めた。
試合開始後、ローキックで前に出ていったメンデスは、続けて大きな右をエルキンスにヒット! ふらついたエルキンスだが、なんとか持ち直した。しかしチャンスと見たメンデスはさらに前に出て、再び強烈な右をテンプルに! エルキンスはスローモーションの如くマットに沈んでいった。
パワフルなレスラーのメンデスは、これで3連続の豪快なKO勝ち。戦績を14勝1敗とした。その唯一の敗戦は、昨年1月の王者ジョセ・アルドとのタイトルマッチにおけるものだ。エルキンスはこれでフェザー級に落として初敗戦。戦績は17勝3敗となった。
「アルド戦以降、僕は打撃の練習に本当に力を入れてきたんだ」とメンデスは言った。メンデスは12月以来、3 人もの対戦相手から負傷によって試合をキャンセルされてきたのだ。「スタンドでの戦い方が分かってきたよ。そして今回、突然のオファーを受けてくれたダレンを賞賛したいね。」
フランシス・カーモント vs. ロレンツ・ラーキン
二人のミドル級戦士、フランシス・カーモントとロレンツ・ラーキンは、お互いリズムや距離を掴めないままスローペースの戦いを展開。結局試合は判定にもつれ込み、GSPのトレーニングパートナーであるカーモントが勝利し、これがUFCデビューであったラーキンの全勝記録をストップした。
1ラウンド。前に出てたまに手を出すカーモントに対して、KOアーティストのラーキンはリーチ差もあって中に入れない。やがてカーモントが組み付いてしつこくシングルレッグを狙うが、ラーキンはテイクダウンを許さなかった。
2ラウンド。やや距離を掴みはじめたラーキンはローを当てる。しかしカーモントがテイクダウンでペースを取り返す。ラーキンは立ち上がるが、しつこくタックルを狙ってゆくカーモントは、終了寸前に再びテイクダウンを決めてみせた。
3ラウンド。ミドルの交換を見せた両者だが、やがて攻防は再びカーモントのシングルレッグ狙いからケージ際に。カーモントは三角に捕まりかけるが脱出。ラーキンは下からゴゴプラッタ、キムラと仕掛けて体勢をひっくり返すことに成功。しかしカーモントは立ち上がってみせた。
判定は全員29-28でカーモントを支持したが、観客はブーイング。これでカーモントは10連勝で21勝7敗となった。UFCではこれで5連勝。「全力を出し切ったよ」とラーキンは語った。「今までで一番学ぶことの多い試合だった.勝てなかったけど、技術的には僕のベストバウトだと思う。」ラーキンはこれで13勝1敗1ノーコンテストとなった(ノーコンテストは、ムハンマド・ローウェル相手に敗戦後、相手の禁止薬物摂取が発覚したことによるもの)。
ラムジー・ニジェム vs. マイルズ・ジュリー
TUF13において負傷欠場を余儀なくされ、TUF 15に出場したマイルズ・ジュリーが、そのTUF13において決勝進出したラムジー・ニジェムから劇的なKO勝利を収めた。これでこの日6試合目にして5度目のKO決着となった。
1ラウンド、前に出て行くニジェムに対して、カウンターのテイクダウン決めたジュリー。そのままサイドからバックを奪っていき、腕十字やクルシフィクスを狙ってゆく。ニジェムは立ち上がるが、ジュリーはまたしてもテイクダウンし、バックを奪う。ニジェムは捕まるが、三角に捕まってしまう。それも脱出したニジェムは逆にバックを取り返す。しかしジュリーはさらにそれを切り返して逆三角締めを狙っていった。
2ラウンド。遠い距離から打ち合った両者。やがて前に出ていったニジェムに対して、ジュリーのオーバーハンド・ライトがヒット! 失神してマットに沈んだニジェムに、勢い余ったジュリーはさらにダイブして不必要な一撃を入れてしまった。1分02秒の出来事だった。
サンディエゴのアライアンスにおいて、ドミニク・クルーズやロス・ピアソンと練習を積む24才のジュリーはこれで12戦全勝。ニジェムの連勝は3でストップし、戦績は8勝3敗となった。
ジュリーの試合後インタビューはこちら。
ジョセフ・ベナヴィデス vs. ダレン・ウエノヤマ
サクラメントのジョセフ・ベナヴィデスが、サンフランシスコのダレン・ウエノヤマを打撃で圧倒し、北カリフォルニア勢同士のフライ級決戦を、2ラウンドTKOで制した。
試合開始と同時に勢いよく飛び出していった両者。だが終始主導権を握ったのはベナヴィデスの方だった。パンチとキックを何発もヒットさせたベナヴィデスは、ウエノヤマの蹴りを捕まえては投げつけ、倒れたウエノヤマの足に蹴りを入れていった。さらにテイクダウンも奪ったベナヴィデスは、ラウンド終了前にはハイキックもヒット! ウエノヤマをダウンさせた。
2ラウンドに入ると、ますますベナヴィデスがウエノヤマを圧倒し、何度もダウンを奪ってみせた。ウエノヤマもテイクダウンからバック狙いに移行してみせるが、ベナヴィデスはポジションを許さない。さらに面白いようにパンチをヒットさせたベナヴィデスは、強烈な右ボディをヒット! たまらずマットに沈んだウエノヤマに向かって、追い打ちをかけたベナヴィデスが4分50秒でTKO勝利を飾った。
去年9月のタイトル戦にこそ敗れたものの、試合前からトップコンテンダーの地位にあったベナヴィデスはこれで18勝3敗。その地位を不動のものとした。「今日は調子が良かったよ」とベナヴィデスは語った。「ウエノヤマのような優れたグラップラーとグラウンドの攻防になって、特にトップを奪った時は上手く戦えた。右ストレートのフェイントからボディを当てることができたんだ。僕の素晴らしいコーチたちが、効いていると叫んだから決めにいったんだ。」
「僕が思うに、ジョセフは世界一で、もっともオールラウンドな125パウンド級のファイターだよ。ベルトを持っていようがいまいがね」とウエノヤマは語った。「今日はやられてしまったから、もっと練習しないと。ジョセフは素晴らしい試合をした。尊敬するよ。」試合前はランキング8位につけていたウエノヤマは、これで8勝4敗となった。
ベナヴィデスの試合後インタビューはこちら。
ティム・ミーンズ vs. ホルヘ・マスヴィダル
積極的に攻めていきテイクダウンを奪っていったホルヘ・マスヴィダルが、ティム・ミーンズに3-0の判定勝ちを収め、UFCデビューを勝利を飾った。
試合開始後、オクタゴン中央を取ってキックとジャブを放っていったミーンズ。しかし攻防の主導権を握ったのは、ボディを有効に当てたマスヴィダルの方。さらにマスヴィダルはラウンド終了前にテイクダウンからバックコントロールを奪い、試合を有利に進めていった。
2ラウンド、またもやテイクダウンを奪ったマスヴィダル。しかしミーンズも下からエルボーやアップキックを当ててマスヴィダルを下がらせる。しかしスタンドで優位にたったマスヴィダルは再びテイクダウンを奪うとパウンドを入れてゆく。ミーンズも下から三角狙いをみせては肘を出してゆき、グラウンド状態ながら、両者ともに出血する激しい打撃戦となった。
3ラウンド。またしてもテイクダウンを奪うマスヴィダルだが、ミーンズも下から肘を当ててマスヴィダルの顔面の傷をまた開いてみせる。さらに上と下から激しい打撃を交換する両者。やがてミーンズはマスヴィダルの腕をキムラに捕らえてリバーサルに成功! 逆に上からパウンドを入れながら試合終了のベルを聞いた。
判定は全員29-28でマスヴィダルに。マスヴィダルはこれで24勝7敗。ストライクフォースでの彼の敗戦は、本日メインイベントに登場する、当時の王者ギルバート・メレンデス戦のみだ。「打撃で行くつもりだったんだけど、レスリングがうまくいったよ」とマスヴィダルは言った。「ガードポジションの上から殴るのは気分が良かったよ。」
「まさかマスヴィダルがあんなにテイクダウンをしてくるとはね」と、18勝4敗1分となったミーンズは語った。連勝が9でストップしたものの、上機嫌のミーンズはさらに続けた。「殴り合いになると思ってたんだよ。テイクダウンをもっとディフェンスしないといけなかったね。まあそんなにがっかりはしてないよ。観客は喜んでくれたし、観客の望む試合をできたからね。」
TJ ディラシャウvs. ウゴ・ヴィアナ
サクラメントのTJディラシャウが、TUFブラジルニ出場したウゴ・ヴィアナと白熱の攻防の末、1ラウンドでKO勝利を収めた。
試合開始後テイクダウンを狙ったディラシャウに対し、最初にパンチを当てたのはヴィアナ。しかしディラシャウはスクランブルからバックを奪ってゆく。しかしヴィアナも立ち上がって振りほどく。12才の頃からテコンドーをしていたヴィアナはさらに膝をヒットし、ディラシャウの鼻を血に染める。対するディラシャウも二度目のテイクダウン。その後両者は、お互いダウンを奪い合う大打撃戦を展開。やがて右ストレートを当てたディラシャウは、さらにアッパーとボディにつなぎ、倒れたヴィアナに鉄槌を連打して、4分22秒で決着を付けてみせた。
これでディラシャウは9勝1敗に.唯一の敗戦は、TUF 14決勝戦におけるディエゴ・ブランダオ戦のみだ。「ウゴが速くてタフなのは知ってたよ」とディラシャウは言った。「だからこっちも速いペースの攻防を心がけたんだ。」敗れたヴィアナはこれで7勝2敗。UFCでは3戦目にして初敗北となった。
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アンソニー・ンジョカーニ vs. ロジャー・ボウリング
これまでUFCでは5連続の判定決着を続けていたアンソニー・ンジョカーニが、とうとう派手なKO勝利を取り戻した。ンジョカーニはストライクフォースから来たロジャー・ボーリングを2ラウンドで仕留めたのだ。
大部分がスタンドの攻防に費やされた1ラウンド、軽い足取りのンジョカーニに対して、ボウリングの方は前に出て距離を詰めることを余儀なくされた。ボウリングはリーチ差にもかかわらずボディ、ローキック、そして豪快な左フックをヒットさせる。対するンジョカーニは常に素早く動き続ける。終盤ボウリングは見事なダブルレッグを決めてテイクダウンし、パウンドを落としてゆく。落ち着いて対処したンジョカーニは立ち上がると、距離を掴んだようで逆に膝、ハイキック、ストレート、右エルボーと当てていった。
2ラウンド。ンジョカーニはボウリングの蹴り足を掴んでテイクダウン。さらに多彩な蹴りを当ててゆくンジョカーニ。対するボウリングも打ち合いに望むがスピードで及ばず、より背の高いンジョカーニを追ってゆくことを余儀なくされてしまう。やがてラウンド中盤、ンジョカーニの左フックが完璧なタイミングでヒット! ボウリングはまず膝から崩れた後、顔面からマットに沈んでいった。追い打ちをかけさえせずに歩き去ったンジョカーニは、ブレイクダンスを披露して勝利を祝った。
試合時間は2分52秒WECの元ボーナス稼ぎのンジョカーニは、これで2010年以来のKO勝ち、通算成績は17勝7敗となった。「気分は最高さ」とンジョカーニは語った。「カリフォルニアでの最近の3試合は全て負けていたんだ。このジンクスは打ち破らないとと思っていたんだ」。敗れたボウリングの方はこれで11勝4敗に。
ンジョカーニの試合後インタビューはこちら。
クリフォード・スタークス vs. ヨエル・ロメロ
レスラー同士の対決はしばしば打撃決着となるものだ。この日のミドル級の一戦も然り。キューバレスリング五輪代表にして銀メダリストのヨエル・ロメロが、グラップラーのクリフォード・スタークスを92秒で沈めてみせたのだ。
試合開始。二人の巨大なミドル級戦士は、ともに遠い間合いをとって、重いローと射程距離の長いパンチを交換する。やがてロメロがいきなりのフライングニーを顔面に! 倒れたスタークスに、ロメロはパウンドで追撃して試合を決めてみせた。
ATTでトレーニングを行うロメロは、ズッファ参戦後初勝利(今まではストライクフォースで0勝1敗)。これで5勝1敗、5勝の全てはKOによるものだ。スタークスはこれで二連敗。通算戦績は8勝2敗、UFC戦績は1勝2敗となった。
ロメロの試合後インタビューはこちら。