二人のライト級戦士、
ジム・ミラーと
ジョー・ロウゾン。それぞれ13試合を
UFC で経験し、二人合わせて15ものポストファイトボーナスを獲得している両雄は、期待を裏切ることのない激闘を展開してみせた。この日、他の三つのミドル級戦を上回る輝きをみせたこの試合は、年間ベストバウト候補のリストに土壇場で滑り込むものと言えよう。
ジム・ミラー vs. ジョー・ロウゾン 共に打たれ強く、オールラウンドファイターにして電光石火のサブミッションアーティスト同士の二人、ミラーとロウゾン戦いは、あたかも合わせ鏡を見るが如き戦いになるだろうと予想されていた。かくして試合終了後、その合わせ鏡は血で彩られたものとなった。両者の戦いに魅了された会場は、 判定勝ちをおさめたミラーを惜しみなく称えた。
試合開始とともに、いつも通り積極的に攻撃を仕掛けたのはロウゾン。対するミラーもまったく劣らない勢いをもって、突進してくるロウゾンを迎撃した。逆にロウゾンをケージ際に追い詰めアッパーカットでふらつかせたミラーは、さらにローキックでロウゾンをマットに這わせてみせる。その後ミラーが接近戦からのヒジの連打でロウゾンの額をカット。さらにスタンド状態での肩固めを仕掛けると、ロウゾンの開いた傷口から血が流れ出て、ドクターによる傷口のチェックのため試合が中断されることとなった。再開後もパンチで畳み掛けるミラー。それを楽しむかのように耐えて逆にパンチで逆襲に出るロウゾン。両者の蹴りが交錯してお互いマットに這う場面もあったこのラウンド、両者とも一歩も退かずに打ち合い続け、終了のブザーが鳴ると観衆はスタンディングオベーションで二人を称えた。
2ラウンド開始早々、柔術黒帯のミラーがテイクダウンを決める。サブミッションでは負けていないロウゾンは、下からミラーの片腕を抱えて反撃の体勢に。やがてロウゾンはスイープに成功。しかしここで、ロウゾンの剥がれかかったグローブのテープをカットするために試合はまたしても一時中断。再開後ラバーガードを取るミラーに対して、ミラーを持ち上げて立ち上がってマットに叩き付けるロウゾン!ダメージこそ与えられなかったものの、大いに観衆を沸かせてみせた。さらに腕十字や膝十字を狙ってゆくロウゾンだが、両者血塗れで滑り易くなっていることもありミラーがエスケープ。このラウンドの終了後も、観衆はまたしてもスタンディングオベーションで両者を迎えた。
3ラウンド、両者は激しい出入りを繰り返しつつボクシングの攻防を展開した。やがてボディ打ちにいったロウゾンが転倒。ミラーを自らのガードの中に誘おうとするロウゾンだが、ミラーは自ら望むスタンド状態での戦いをキープする。ロウゾンが左のパンチと膝を当てると、ミラーはロウゾンを掴んで右の肘を連打して返す。残り1分を切ったところで、ロウゾンが飛び込んでフライングレッグロック狙いからギロチンに移行!しかしそこで惜しくも試合終了のブザーが鳴った。
「ロウゾンを倒すためには、全力を出し尽くさないと分かっていたんだけど、結局決めきれなかったよ」と試合後にミラーは語った。「それほど凄い選手だってことだ。土壇場で彼は勝つためにあんな技まで繰り出したんだよ。」
ジャッジはいずれも29-28でミラーの勝利を支持。ミラーは通算成績を22勝5敗とし、ロウゾンのほうは22勝8敗となった。試合後の会見において、この試合がファイト・オブ・ザ・ナイトに選ばれたことがアナウンスされた。両者の死闘はボーナスという形で報われることとなった。
ティム・ボーシュ vs. コスタ・フィリッポウ観客を沸かせることができずに判定決着したミドル級試合が二つ続いた後、コスタ・フィリッポウはティム・ボーシュを3RKOに葬り、とうとう観客にミドル級試合での完全決着を提供してのけた。
ボーシュは試合開始後すぐに、元プロボクサーのフィリッポウをフェンスまで追いつめる。そこからシングルレッグを狙うものの、フィリッポウに首を狙われることに。やがて攻防がマット中央に戻ると、フィリッポウはボディ打ちに続きアッパーカットを炸裂させ、ボーシュの額からは汗のしずくが飛び散った。フィリッポウがさらに前に出ると、すかさずグラウンドに持ち込むボーシュ。セラとロンゴのもとでトレーニングを積むフィリッポウは、クローズドガードからボーシュの片腕を抱えて、残り35秒のところでブレイクに持ち込んだ。そこから容赦のないパンチのコンビネーションで前に出たフィリッポウだが、ラウンド終了間際にボーシュが放った何気ないハイキックを受けてぐらつくことに。
2ラウンド。開始後すぐにフェンス際にもつれ込んだ両者だが、やがてケージの中央に移動し、そこで一進一退の打撃の攻防を展開。フィリッポウの一発のパンチがボーシュの目を突くと同時にマウスピースも飛び出させ、試合は一旦中断した。再開後、テイクダウンを防がれたボーシュはグラウンドへとフィリッポウを誘い、そこから腕十字を狙う。しかしこの体勢でより有効な攻撃を繰り出したのは、上からパンチを放ったフィリッポウの方だった。
3ラウンド。おそらくどこか負傷して、さらに額から血を流すボーシュは、テイクダウンを狙って突っ込むもことごとく下のポジションに。グラウンド&パウンドを放っては立つフィリッポウに対して、ボーシュの方は徐々に立ち上がることを嫌がるようになってゆく。フィリッポウが上から打撃を当て続けると、2分21秒、とうとうレフェリーのキム・ウィンスローが試合をストップした。
「何度か新人のような間違いを犯してテイクダウンを取られてしまったけど、打ち合いになったら倒すことができたよ」と語ったフィリッポウはこれで5連勝。戦績を12勝2敗(1ノーコンテスト)に。片やボーシュはミドル級において初の黒星を喫し、戦績は16勝5敗となった。
フィリッポウの、試合後インタビューを見てみよう
岡見勇信 vs. アラン・ベルチャー
2006年、二人のミドル級戦士、アラン・ベルチャーと岡見勇信は、お互いのUFCデビュー戦で激突。その時は岡見が辛くも判定勝利を挙げた。それから6年、両者合わせて28試合をUFCで経験した後、両雄は再び相見えた。結果はまたしても同じもの、むしろより一方的なものであった。グラウンドで圧倒した岡見が3-0の判定勝ちをもぎとったのだ。
試合開始後、数発のローとハイキックを受けた岡見は、フェンス際までベルチャーを押し込んで動きを止める。必死に差し返そうとするベルチャー。やがて岡見が足を掛けて両者はグラウンドに。そこでベルチャーはギロチンからゴゴプラッタを狙ってゆく。危機を逃れた岡見が金網際のポジションを維持するのに対し、ベルチャーはガード、ハーフガードで守りを固めにいった。やがて岡見がサイドポジションを奪うと、ベルチャーは膝立ちの体勢に。岡見がベルチャーのバックに付こうとしている時、ラウンドが終了した。
2ラウンド。足を掛けて岡見を倒したベルチャーだが、岡見を立たせたところでギロチンを狙いに行き、結局はガードに引き込んでしまう。頭を抜いた岡見は再びハーフガードからパウンドでベルチャーを削りに行く。残り2分30秒のところでレフェリーがスタンドを命じた。これで自由を得たベルチャーのパンチがヒットし、ぐらつく岡見。しかし岡見はここで前に出て距離を詰め、またしても試合をフェンス際に持ち込む。 テイクダウンからハーフガードで上の体勢を取る岡見だが、レフェリーはやがて再びスタンドを命じた。
3ラウンドとなると元気を取り戻したベルチャー。攻勢に転じて岡見に有効打を当てる。しかし岡見はすぐに試合をまたしてもフェンス際に、続いてマット上に持ち込んだ。しかしここでトップを取ったのはベルチャー。岡見の首を狙いに行ったベルチャーは、岡見が立ったところで再びギロチンに。しかしガードの体勢から岡見が首を引き抜くと、試合はまたしても岡見がハーフガードの体勢で上からコントロールするという展開に戻った。場内のブーイングが増して行くのにもめげずに岡見はマウントへ。ベルチャーの頭を金網に押し付けた状態で、ボディと肩にパンチを集めた岡見は、さらなるグラウンド&パウンドへの扉をこじ開けていった。背中を向けたベルチャーに対し、岡見がバックから両足フックを入れてさらに攻撃を続けたところで、ラウンド終了を告げるブザーが鳴った。
ジャッジの判定は30-27、30-27、29-28でいずれも岡見を支持。一度タイトル挑戦を経験している岡見はこれで戦績を29勝7敗とした。一方、黒帯柔術家ベルチャーの戦績は17勝6敗となった。
岡見の試合後のインタビューを見てみよう
クリス・リーベン vs. デレク・ブランソン 数ヶ月もの間、ソーシャルメディアで試合を陳情していた甲斐あって
ストライクフォースからやってきたデレク・ブランソンは、直前で今大会のメイン・カードのオファーを受けた。ザ・クリップラーことクリス・リーベンの相手が負傷したのだ。果たしてブランソンはこのチャンスを最大限に生かしてのけた。ディヴィジョン2オールアメリカンレスラーのブランソンは、そのレスリング能力を用いて試合をコントロールし、リーベンを疲弊させた。彼はわずか8日間の準備期間の後に3-0の判定勝利をもぎ取ったのだ。
この試合で最初に攻撃を仕掛けたのは、ローを打っていったブランソンだった。その足を捕まえたリーベンだったが、ブランソンは組み付いてケージ中央でリーベンをテイクダウン。リーベンは素早く腕十字を仕掛けるも、ブランソンはスラムを用いてエスケープし、インサイドガードからヒジを放ってゆく。リーベンは立ち上がるも、ブランソンは再び投げからグラウンドへ。そこからマウントを奪って肩固めを狙って、さらにハーフガードからのパウンドを浴びせてゆく。リーベンは残り30秒のところで立ち上がり、クリンチから膝を放つものの、その強烈な拳はブランソンのコントロールの前に封じられてしまった。
1ラウンドを経てブランソンのグラウンド技術への警戒を深めたリーベンは、ブランソンがケージ際に押し込んで来るたびに巧みにディフェンスをしてのけた。リーベンが二発パンチを放つと、その威力を体感したブランソンはリーベンのボディに組み付いてテイクダウン。立ち上がろうとするリーベンに対してギロチンを狙ったブランソンは、スタンドに戻った後もパンチやローキックにおいても攻勢をかけていった。さらに肘やジャブも当てたブランソンは、出来た隙に乗じてテイクダウンを狙ってゆく。そのほとんどを防いでみせたリーベンだったが、そのぶん彼のパンチのスピードはどんどん下がっていった。
3ラウンドにおいては、しきりにアッパーカット狙っていったリーベン。しかしブランソンはジャブ、右ストレート、蹴りにテイクダウン狙いを織り交ぜて主導権を渡さない。そして1分経過時には再びテイクダウンを奪ってみせた。対するリーベンはケージを使って立ち上がり、スタンドから強烈な左を当て攻勢に出る。しかし、2つのラウンド中に四度も時計を見て残り時間を確認したブランソンは、残り45秒の時点でまたしてもテイクダウンを奪い、試合を決定づけた。ジャッジは三者ともに29-28でブランソンの勝利を宣告。ブランソンはUFC デビューを勝利で飾り、戦績を10勝2敗とした。一年以上ものブランクから復帰して敗れたリーベンはこれで22勝9敗となった。
「試合を受けた時に、すでにどんな戦いになるかは分かっていたんだよ。リーベンは全力で殴ってくるからね」とブランソンは語った。「2ラウンドには疲れてしまったんだけど、これはただ直前にオファーを受けてトレーニングをしたせいだと思うよ。」このように語ったブランソンはその後リーベンに向けて以下のようなツイートを送った「あんたのことはずっと尊敬していたんだ。恐ろしいファイターだ。チャンスをくれてありがとう。光栄だよ。」
ブランソンの試合後のインタビューを見てみよう