2014年9月20日、さいたまスーパーアリーナでサム・シシリアとのフェザー級戦を闘う菊野克紀(22勝6敗2分け)はその試合中、終止微笑んでいた。1ラウンドの攻防はスタンドに費やされ、UFCで既にパンチによる2つのKO/TKOを記録していたシシリアの豪腕と、両腕をほとんど腰まで下げた独特の構えからのカウンターの突きと蹴りを織り交ぜる菊野の一撃必殺の打撃の交錯はスリリングそのもので、菊野はその一瞬のミスが破滅をもたらす極限状態を楽しんでいる様であった。 そもそも、菊野は合理性の追求を至上とする近代MMA的な視点では解釈をすることが難しいタイプのファイターだ。2014年1月に行われた菊野のUFCデビュー戦、クイン・マルハーン戦では技術的、そして体力的に相手を圧倒しユナニマス判定勝利を収めたものの、UFC第2戦となった同年5月に行われたトニー・ファーガソン戦では、そのガードの低さを突かれる様な形で幾度となく顔面にパンチをまとめられ、そして2ラウンドに相手のストレートに沈んだ。試合中にファーガソンに背を向ける様な姿すら見せても、決してその両手をガードの為に上げる事の無かった菊野のこの敗戦に対する答えは、そのファイトスタイルの変更ではなくフェザー級への階級の転向だった。 近距離での相手のパワーサイドからの攻撃には、ほとんどその全てに対して上体の軸をずらしながらの鈎突きでカウンターを取りに ... Read the Full Article Here
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